前回の第1回・基本指標編では、移動平均線・RSI・ローソク足・MACDという4つの“コア指標”の使い方を学びました。今回はその応用として、いよいよ「チャートパターン(フォーメーション)」の世界に踏み込みます。
「指標」は数値で過熱感やトレンドを示してくれますが、「パターン」は市場参加者の心理が形に表れたものです。同じ形が何度も繰り返される――それは、株価を動かしているのが結局のところ人間の欲望と恐怖だからです。
本記事で扱う4つのテーマは、ダブルボトム/トップ三角保ち合いサポレジライン乖離率/ボリンジャー。いずれも世界中のトレーダーが何十年も使い続けてきた、“勝率の裏付けがあるパターン”です。約12,000字+6つのSVG図解で、それぞれの形が示す心理と、実戦での仕掛け・損切り・利確ポイントまで踏み込んで解説します。
- ダブルボトム・ダブルトップ形成時の心理と狙い方
- 三角保ち合い(トライアングル)からトレンドブレイクを狙う
- サポートライン・レジスタンスラインの引き方
- 移動平均線の乖離率を使って、行き過ぎた株価の反動を狙う
- 4パターンを”相場の局面”で使い分けるコツ/次回予告
1. ダブルボトム・ダブルトップ形成時の心理と狙い方
もっとも有名で、もっとも勝率が高いと言われる反転パターンがダブルボトム(W底)とダブルトップ(M天井)です。アルファベットの「W」と「M」に似ているため、世界中で同じ呼び方をされています。
1-1. なぜ「W底」「M天井」が出るのか――参加者の心理
ダブルボトムが形成される時、市場では何が起きているのでしょうか。下落相場の中で、ある安値(ボトム1)で買いの勢力が一旦勝って反発します。しかし「ロスカット待ち」「戻り売り狙い」の売りに押されて再び下げ、同水準(ボトム2)まで戻ります。
ここで2回目の安値が1回目を割らずに反転すると、市場参加者は「もう下値は固いのでは?」と感じ始めます。新規買いと売り方の買い戻しが重なり、株価はネックラインと呼ばれる中間の戻り高値を超えていきます――ここが“底入れ確定”の瞬間です。
ダブルトップは真逆。高値圏で2回も売り叩かれ、買い方の戦意が折れていく心理プロセスです。
1-2. 仕掛け・損切り・利確の3点ルール
| 項目 | ダブルボトム(買い) | ダブルトップ(売り) |
|---|---|---|
| エントリー | ネックラインを終値で上抜け | ネックラインを終値で下抜け |
| 損切り | ボトム2の安値を割ったら | トップ2の高値を超えたら |
| 利確目標 | ネックライン+(ネック−ボトム) | ネックライン−(トップ−ネック) |
つまり、「W字/M字の縦の高さ」と同じ値幅をブレイク後に伸ばすのが基本目標です。たとえばボトム2が500円、ネックラインが600円なら、利確目標は700円(ネックの上に同じ100円幅)。これだけで損益比1:1以上のトレードが組めます。
1-3. ダマシを避ける2つのフィルター
フィルター②: ブレイクの瞬間に出来高が増加していること。出来高なきブレイクはダマシ率が高い。
とくに重要なのが出来高です。本物のダブルボトムでは、ボトム2の出来高がボトム1より小さく、ネックラインを抜ける瞬間に出来高が急増する――この”出来高の縮小→拡大”の流れこそが、機関投資家の参入を裏付けるサインです。
2. 三角保ち合い(トライアングル)からトレンドブレイクを狙う
株価は常に動いているわけではありません。一方向に走った後、必ず“小休止”の時期があります。この小休止が三角形の形(トライアングル)になるパターンを三角保ち合いと呼びます。エネルギーを溜めた後のブレイク方向の値幅が大きいため、中級者にとって最も”稼げる”パターンの一つです。
2-1. 3つの三角形と、それぞれが伝える意味
三角保ち合いには大きく3種類あります。
| 種類 | 形 | 含意 | ブレイク方向の確率 |
|---|---|---|---|
| 上昇三角形 | 上値が水平、下値が切り上がる | 買い意欲が徐々に高まっている | 上抜け 約 70% |
| 下降三角形 | 下値が水平、上値が切り下がる | 売り圧力が徐々に高まっている | 下抜け 約 70% |
| 対称三角形 | 上値切り下げ/下値切り上げ | 需給が拮抗、静かなマグマ | 50%/50%(事前判断不可) |
確率はあくまで”傾向”ですが、「上昇三角形なら上抜けに賭ける」「下降三角形なら下抜けに賭ける」という基本姿勢は中級者の勝率を支える重要な前提です。
2-2. ブレイク前に「準備」を整える3ステップ
三角保ち合いで失敗する人の典型は「ブレイクしてから飛びつく」「中途半端な位置で先回り買いする」のどちらかです。中級者として正しい型は次の通りです。
STEP 2: 三角形の「収束点」が近づくほど(残り20〜30%地点)、ブレイクの確度が上がる。
STEP 3: 終値ベースでブレイクラインを抜けたら“翌日の寄り付き”でエントリー。
2-3. 値幅目標の計算式
三角保ち合いには、「保ち合いの最大値幅と同じだけ、ブレイク方向に伸びる」という経験則があります。
たとえば三角形の最大幅が200円(高値1,200円、安値1,000円)なら、ブレイクライン(仮に1,150円)から上抜けした場合、1,150円+200円=1,350円が第一の利確目標になります。
3. サポートライン・レジスタンスラインの引き方
テクニカル分析の“最初に学んで、最後まで使い続ける”道具がサポートライン(下値支持線)とレジスタンスライン(上値抵抗線)です。サポレジは指標ではなく「市場参加者が意識している価格水準」を可視化する線。これが正しく引けるかどうかで、トレードの精度は決定的に変わります。
3-1. ライン引きの黄金ルール「3点が触れる線」
初心者がやりがちなのが、適当な高値・安値を1〜2点だけ結んで「これがサポレジだ」と決めつけるパターン。プロの引き方は違います。
② 必ずしも”ピッタリ”である必要はなく、「ヒゲ込みでだいたい同じ価格圏」でOK。
③ 意識される回数が多いほど、ラインの“信頼度”と“破られた時の値幅”が大きくなる。
たとえば、3か月の間に3回、株価が1,000円付近で反発しているなら、1,000円は強力なサポート。プロのトレーダーが「1,000円割れたら売る/1,050円超えたら買う」と決めて待ち構えているわけです。
3-2. 「役割転換(ロールリバーサル)」を狙え
サポレジの最強の武器は「役割転換」です。一度ブレイクされたレジスタンスラインは、その後の押し目時にサポートラインとして機能します。逆もまた然り。
これは心理的に当然のことです。1,000円のレジスタンスを上抜けたら、1,000円より下で買えなかった人たちが「次に1,000円まで戻ったら絶対に買う」と待ち構える。だから1,000円が今度は支持線になる――これが上昇トレンド中の「押し目買いポイント」の正体です。
3-3. キリ番(ラウンドナンバー)と移動平均線も”動くサポレジ”
サポレジは水平線だけではありません。次の3つも重要なサポレジ機能を果たします。
| 種類 | 例 | 意識される理由 |
|---|---|---|
| キリ番(ラウンドナンバー) | 1,000円、5,000円、10,000円 | 注文ロジックが集まりやすい心理的節目 |
| 移動平均線 | 25日線・75日線・200日線 | 機関投資家のロジックに組み込まれた”動くサポレジ” |
| 過去の高値・安値 | 52週高値、3か月前の戻り高値など | 多くのトレーダーが利確・損切りに使う |
水平線とこれら”動くサポレジ”が“同時に重なる場所”は、極めて強力な反転ポイントになります。たとえば「1,000円のキリ番+75日線+過去の安値圏」が同水準で重なる銘柄は、押し目買いのプロが必ず見ているレベルです。
4. 移動平均線の乖離率を使って、行き過ぎた株価の反動を狙う
株価は移動平均線を中心にして「ゴム紐」のように伸び縮みする――この性質を利用するのが移動平均乖離率とボリンジャーバンドを使った逆張り戦略です。「行き過ぎは必ず戻る」という統計的事実を、確率に変えて取りに行く手法です。
4-1. 移動平均乖離率の見方
乖離率は次の式で計算されます。
乖離率 = (現在の株価 − 移動平均値)÷ 移動平均値 × 100(%)
たとえば株価1,100円・25日線が1,000円なら乖離率は+10%。プラスは”買われすぎ”、マイナスは”売られすぎ”の方向です。経験則的な目安は次の通りです。
| 銘柄タイプ | 逆張り買いの目安(25日乖離) | 逆張り売りの目安(25日乖離) |
|---|---|---|
| 大型株(日経225採用銘柄) | −5% 〜 −7% | +5% 〜 +7% |
| 中型株 | −10% 〜 −15% | +10% 〜 +15% |
| 小型・新興株 | −20% 〜 −25% | +20% 〜 +30% |
銘柄ごとに過去の乖離率レンジを把握して、自分なりの「行き過ぎ閾値」を決めるのが正解です。
4-2. ボリンジャーバンドで「行き過ぎ」を統計的に判断
ボリンジャーバンドは、20日移動平均線の周りに「±1σ・±2σ」の標準偏差バンドを描いたインジケーターです。統計上、株価が±2σ内に収まる確率は約95.4%、つまり±2σを超える事象は全体の約4.6%しか起きないことになります。
この性質を利用して、「±2σにタッチしたら逆張り」というのが王道の使い方。ただし注意点があります。
レンジか、トレンドか――この見極めには次のサインが使えます。
● バンドが拡大(エクスパンション)している=トレンド発生中 → 逆張り厳禁、順張りで攻めるべき局面。
4-3. 乖離率+ボリンジャーの”2段確認”逆張りセットアップ
中級者として精度の高い逆張りを組むなら、次の2段階フィルターをおすすめします。
| 条件 | 確認内容 |
|---|---|
| ① 大局トレンド | 200日線が上向きである(上昇トレンド中の押し目買い限定) |
| ② 過熱感 | 25日乖離率が −7% 以下、または株価が −2σにタッチ |
| ③ ボラ環境 | ボリンジャーが収縮〜安定(バンドウォーク中ではない) |
| ④ ローソク足 | 下ヒゲ陽線・包み線・はらみ線などの反転シグナル |
| ⑤ エントリー | 翌日の寄り付き、または当日終値直前の指値 |
| ⑥ 損切り | −2σを終値で割ったら/直近安値を割ったら |
| ⑦ 利確 | 20日線(中心線)まで戻ったら半分利確、+1σで残り利確 |
この型を守れば、勝率は60〜70%、損益比は1:1.2〜1:1.5程度に収まります。重要なのは「バンドウォーク中は手を出さない」という規律。トレンドが強い局面では、第3章で扱うグランビル・一目均衡表など別の武器に切り替えましょう。
5. 4パターンを”相場の局面”で使い分けるコツ/次回予告
ここまで紹介した4つのチャートパターンは、それぞれが“得意な相場局面”を持っています。むやみに全てを混ぜて使うのではなく、現在の相場が「どの局面か」を判断してから武器を選ぶことが、中級者として一段上に上がる鍵です。
| パターン | 得意な局面 | 苦手な局面 |
|---|---|---|
| ダブルボトム/トップ | 長期トレンドの転換点/天底圏 | レンジ中盤、トレンド継続中 |
| 三角保ち合い | 中期トレンドの”小休止”からの再加速 | 突発ニュースで動く銘柄 |
| サポレジ | すべての局面で使える基礎 | ニュースで一気に飛んだ銘柄(ライン無効化) |
| 乖離率/ボリンジャー | レンジ相場での逆張り | 強いトレンド中(バンドウォーク) |
5-1. 中級者向け 1日のチャート分析ルーチン(提案)
場中(チャンス到来時のみ): (1)ダブル底/三角ブレイク発生 → エントリー。(2)±2σタッチ+反転シグナル → 逆張り検討(バンド収縮中のみ)。
夕方(引け後): 日足チャートを更新し、ローソク足の終値で形が確定したかを確認。形が出たならエントリー予約。
週末: 週足ベースで保有・監視銘柄の大局トレンドと主要サポレジを再確認。
- 「形が完成する前」に飛びつく → ネックライン未ブレイクで買う、三角形収束前に動く。完成を待つ規律が利益を作る。
- 1つのパターンで全相場を取ろうとする → 局面に合わない武器を使うと、ダマシで損失が積み上がる。
- 損切りラインを動かす → ライン引きと同じくらい、損切りを”動かさない”規律が大事。
次回予告:第3章【実戦・検証系】トレンド系・オシレーター系
次回からは中級者の応用編、いよいよ「実戦的な複合手法」の世界に入っていきます。テーマは:
- グランビルの法則の8つの売買サインを実チャートで検証
- 一目均衡表の「雲」の使いこなし術
- 順張りと逆張り、市場局面に応じた使い分け
- ボリンジャーバンドの「バンドウォーク」を見逃すな
本記事の4パターンは、これらの応用手法を支える土台になります。形を読む目を鍛え続けることが、テクニカル分析の上達の最短経路です。
チャートに描かれているのは値段ではなく、“市場参加者の集合心理”。同じ形が繰り返される理由は、人間の感情パターンが繰り返されるから。これを理解した瞬間、チャートは”情報のかたまり”から”物語”に変わる。
それでは、次回の実戦・検証編でまたお会いしましょう。良いトレードを!


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