2026年7月から8月に増配または上方修正を発表した高配当株146社を17項目で採点したシリーズの、個別銘柄編6社目です。今回は総合6位だった7931 未来工業を、決算短信と適時開示の数字で掘り下げます。
結論
- 7月23日に発表されたのは期末配当を50円から85円へ35円引き上げる増配でした。年間配当は135円になり、予想利回りは2026年8月31日終値3,715円に対して3.63%です。
- ただし前期(2026年3月期)の年間配当は145円でした。135円は前期を10円下回ります。「35円増配」は4月23日に会社が置いた期初予想100円に対する増額であって、前期比では減配です。
- 同じ日に出た今期予想も増収・減益です。売上48,530百万円(+6.3%)に対し、営業利益6,232百万円(-7.3%)、純利益4,342百万円(-7.5%)。営業利益率は14.7%から12.8%へ下がります。
- それでも増配になったのは、配当の決め方が「配当性向50%またはDOE3%の高い方」だからです。業績予想を「未定」にしていた4月は下限のDOE3%=100円しか計算できませんでした。7月に予想を出したことで配当性向50%=135円が計算でき、そちらが高かったので採用された、という順番です。
- 第1四半期は売上・各利益とも過去最高でした(営業利益1,945百万円、前年同期比+31.5%)。ただし会社は理由のひとつに「中東地域のリスクの高まりに伴う自己防衛みあい需要の高まり」を挙げ、続けて中間期はその「反動減」を見込むと書いています。
- 会社予想から逆算すると、第2四半期単独は前年同期比-16.8%、下期は-18.9%の減益です。好調なのは第1四半期だけ、という形になります。
- 財務は極めて強く、自己資本比率80.7%、有利子負債358百万円、営業CFは18期すべて黒字。採点で落としたのは配当の連続性(連続増配0年)です。
前の5社との違い
このシリーズで先に取り上げた5社と並べると、同じ「増配」でも原資がまったく違うことが分かります。
| 銘柄 | 増配の原資 | 来期に残るか |
|---|---|---|
| 6200 インソース | 上場10周年の記念配当 5.5円 | 残らない(一時的) |
| 4746 東計電算 | 保有株の売却益 43億円(特別利益) | 売却を続けなければ残らない |
| 3771 システムリサーチ | 配当方針の変更(累進配当の導入) | 方針が続くかぎり残る |
| 1381 アクシーズ | 鶏肉相場の上昇と飼料コストの下落 | 相場が反転すれば残らない |
| 3964 オークネット | M&A投資枠70億円のうち35億円の振り替え | 原資が尽きれば残らない |
| 7931 未来工業 | 業績予想の再開でDOE3%から配当性向50%へ基準が切り替わった | 利益に連動する(利益が減れば配当も減る) |
1社目は記念配当、2社目は保有株の売却益、3社目は配当方針そのものの変更、4社目は鶏肉相場、5社目は投資予算の振り替えでした。今回の6社目は会社が業績予想を出せるようになったことが原資です。事業で何かが良くなったわけではなく、配当を計算するための材料がそろったという増配になります。
どんな会社か
電線管・配線ボックス・給水給湯用樹脂管などの電気設備資材と、スイッチ・コンセントなどの配線器具の製造・販売を手がける会社です。本社は岐阜県安八郡輪之内町、東証プライム・名証プレミアに上場、決算期は3月20日締め。第1四半期は3月21日〜6月20日という変則的な決算期です。設立は1965年8月(岐阜県大垣市で電設資材の製造販売を目的に設立)、従業員は連結1,295人(うち提出会社845人)。企業理念は「常に考える」の一語です。
製品は電線管・配線ボックス・給水給湯用の樹脂管と、スイッチやコンセントといった配線器具。売上構成比は電材及び管材が76.0%、配線器具が17.6%、その他が6.4%です。中期経営計画の資料では、強みを「他社と同じモノは作らない」「人手不足が深刻化する建築工事現場の省力化に貢献するアイデア製品」と表現しています。研究開発費は年325百万円と規模のわりに小さい一方、取得済みの産業財産権は3,357件あります。
販売の形も特徴的です。有価証券報告書によると、少数の特約代理店制度を採らず、全国の電材・管材問屋に直接販売しています。特定顧客への依存と与信リスクを避けられる反面、受注が小口化して物流費の負担が増える、と会社自身がリスクとして書いています。
株価は2026年8月31日終値で3,715円、今期予想EPS 268.54円なのでPERは13.8倍、BPS 3,422円に対してPBRは1.09倍です。
時価総額の読み方には注意が必要です。発行済株式25,607,086株のうち9,433,331株(36.8%)が自己株式なので、発行済株式数ベースの時価総額は約951億円ですが、自己株式を除くと約601億円になります。この点は後で詳しく触れます。
業績はどう伸びてきたか

売上高は2009年3月期の288億円から2026年3月期の457億円へ、17年で1.6倍。直近5期は毎期最高売上を更新しています。ただし伸び方は緩やかで、採点上も売上10年CAGRは3.06%と控えめです(評価は○)。
目を引くのは2024年3月期の断層です。営業利益が40.4億円から73.3億円へ、1期で+81%跳ねました。営業利益率も10.2%→16.6%です。ここで起きたのは製品の価格改定で、以後の利益水準はこの高さで維持されています。
逆に言えば、ピークは2024年3月期で、そこから2025年3月期69.0億円、2026年3月期67.2億円、今期予想62.3億円と3期連続の減益予想になります。原材料単価の上昇が価格改定の効果を食っている、というのが会社の説明です。
主戦場は縮んでいる

この会社を見るうえで避けて通れないのが、建築市場の縮小です。会社の決算説明資料から数字を拾うと、新設住宅着工戸数は2023年3月期の860千戸から2026年3月期の711千戸へ減りました。非住宅も着工床面積が43.3百万㎡から32.5百万㎡へ、25%減っています。
2025年4月施行の建築基準法改正(全建築物の省エネ基準適合義務化)による駆け込み着工の反動と建築単価の上昇で、新設住宅着工戸数は大幅に減少。非住宅も棟数・床面積とも減少傾向(会社の決算説明資料)
有価証券報告書でも「新設住宅着工状況の動向について」は発生頻度 中/影響度 大のリスクとされ、「電材及び管材事業と配線器具事業は、ともに住宅建築業界に大きく依存している」と明記されています。市場が縮むなかで売上を伸ばしてきたのは価格改定によるもの、というのがこの5期の実態です。
本題:なぜ減益なのに増配なのか

ここが今回いちばん重要なところです。順番に見ていきます。
2026年4月23日。本決算と同時に、会社は今期(2027年3月期)について第1四半期の予想だけを出し、中間期と通期は「未定」としました。理由は「中東情勢による影響の予測が困難なため」。同じ日に、公表予定だった「中期経営計画2027」の延期も発表しています。
このとき配当予想は中間50円+期末50円=年100円と置かれました。決算短信にはその根拠がはっきり書かれています。「次期2027年3月期の配当方針につきましては、配当性向50%またはDOE3%(1株につき100円)のどちらか高い方を目安に配当を実施することを予定しております」。利益予想がない以上、配当性向50%は計算できません。だから下限のDOE3%=100円を置いたわけです。
2026年7月23日。第1四半期決算と同時に、中間期・通期の業績予想と中期経営計画2027が公表されました。会社は「調達先の多様化等により供給リスク低減に向けて一定の見通しが立った」と説明しています。
通期の純利益予想4,342百万円、EPS 268.54円。その半分は134.27円で、DOE3%の100円より高い。だから期末配当が50円から85円へ、年間135円に修正されました。
つまりこの35円は、業績が上振れて出てきたお金ではありません。もともとの方針どおりに計算した結果であり、4月の100円が「利益予想が出せないあいだの仮置き」だっただけです。

配当の中間・期末の内訳を並べると、この会社の配当の作り方がよく分かります。中間配当は50円で固定され、動くのは期末だけ。そして配当性向は2024年3月期以降、49.3%→50.1%→49.9%→50.2%(計画)とほぼ50%に張りついています。
配当性向を一定にするということは、利益が減れば配当も減るということです。実際、2026年3月期は純利益が−2.8%になったのに合わせて年間配当も150円→145円へ下がりました。今期はさらに純利益-7.5%で、配当135円です。
「35円増配」の比較対象を入れ替えると
| 中間配当 | 期末配当 | 年間合計 | 根拠 | |
|---|---|---|---|---|
| 前期実績(2026年3月期) | 50円 | 95円 | 145円 | 配当性向49.9% |
| 今期の期初予想(2026年4月23日) | 50円 | 50円 | 100円 | DOE3%相当(1株につき100円) |
| 今期の修正後(2026年7月23日) | 50円 | 85円 | 135円 | 配当性向50%相当 |
期初予想と比べれば+35円の増配。前期実績と比べれば−10円です。同じ135円が、比較の相手を変えるだけで増配にも減配にも見えます。
利回りで確かめると、3,715円に対して135円なら3.63%、100円のままなら2.69%、前期実績の145円なら3.9%。スクリーニングに出てくるのは真ん中の3.63%ですが、前期の水準は下回っていることは押さえておきたいところです。
この会社は毎年、期初予想を低めに置く

ここまで読むと「では今回の増配は特別なことなのか」という疑問が出てきます。答えはいいえです。過去の配当予想と実績を並べると、はっきりした癖が見えます。
| 決算期 | 期初の会社予想 | 実績(今期は修正後予想) | 引き上げ幅 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 114円 | 150円 | +36円 |
| 2025年3月期 | 130円 | 150円 | +20円 |
| 2026年3月期 | 130円 | 145円 | +15円 |
| 2027年3月期 | 100円 | 135円 | +35円 |
4期連続で、期初に置いた予想を期中に引き上げています。2024年3月期は114円→150円(+36円)、2025年3月期は130円→150円(+20円)、2026年3月期は130円→145円(+15円)、そして今期が100円→135円(+35円)。
業績予想でも同じことが起きています。2026年3月期の通期営業利益予想は、期初から第3四半期まで6,149百万円で据え置かれていました。実績は6,723百万円で、予想比+9.3%です。今期の第1四半期も、4月に出した営業利益予想1,290百万円に対して実績1,945百万円と+50.8%の上振れでした。
この癖を踏まえると、今期の通期予想6,232百万円(-7.3%)も保守的な置き方である可能性はあります。ただし4期続いたからといって5期目も続くとは限りませんし、今回は原材料単価という具体的な逆風が示されています。
第1四半期が良かった理由は、そのまま第2四半期の逆風になる

第1四半期(2026年3月21日〜6月20日)は、売上・営業利益・経常利益・純利益のすべてで過去最高でした。
| 会社予想(4月23日) | 実績 | 予想比 | 前年同期比 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,820百万円 | 12,764百万円 | +8.0% | +9.3% |
| 営業利益 | 1,290百万円 | 1,945百万円 | +50.8% | +31.5% |
| 経常利益 | 1,316百万円 | 2,006百万円 | +52.5% | +32.6% |
| 四半期純利益 | 877百万円 | 1,379百万円 | +57.1% | +33.5% |
会社は増収の理由を2つ挙げています。ひとつは電材・管材・配線器具の一部製品の価格改定。もうひとつが「中東地域のリスクの高まりに伴う自己防衛みあい需要の高まり」です。中東情勢で材料が入らなくなるかもしれないと考えた取引先が、先に買い込んだという意味になります。
つまり第1四半期の売上には、本来なら後の四半期に立つはずだったものが含まれている可能性が高い。会社自身、業績予想修正の開示にこう書いています。「中間期におきましては、第1四半期での自己防衛みあい需要の高まりから一転した反動減による減収に加え、ナフサ価格の高騰に伴う時間差での当社原材料仕入れ単価への影響から利益水準が悪化することが見込まれます」。
会社予想から四半期を逆算すると、その形がそのまま出ます。
| 営業利益 | 2026年3月期 | 2027年3月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 第1四半期 | 1,479百万円 | 1,945百万円(実績) | +31.5% |
| 第2四半期(単独・逆算) | 1,680百万円 | 1,398百万円 | -16.8% |
| 下期(3Q+4Q・逆算) | 3,564百万円 | 2,889百万円 | -18.9% |
| 通期 | 6,723百万円 | 6,232百万円 | -7.3% |
通期予想に対する第1四半期の進捗率は31.2%です。前期の同じ時期は22.0%でしたから、今期は最初の3か月で1年の利益の3分の1近くを取り切っていることになります。四半期が均等なら25%ですから、残りが薄い形です。
減益はどのセグメントで起きるか

決算短信の巻末にある補足資料に、セグメント別の通期予想が載っています。
| セグメント | 売上高(前期→今期予想) | 営業利益 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 電材及び管材 | 34,733 → 36,468百万円(+5.0%) | 5,993 → 5,107百万円 | -14.8% |
| 配線器具 | 8,037 → 8,613百万円(+7.2%) | 872 → 943百万円 | +8.1% |
| その他 | 2,902 → 3,448百万円(+18.8%) | 711 → 782百万円 | +10.0% |
| 調整額 | — | -853 → -600百万円 | — |
減益は電材及び管材だけで起きています。営業利益5,993百万円→5,107百万円の886百万円減で、これは全社の減益額(491百万円)を上回ります。配線器具(+8.1%)とその他(+10.0%)は増益予想、調整額の改善もあるため、全社では-7.3%に収まる計算です。
電材及び管材は売上の76.0%を占める主力で、しかも売上自体は+5.0%と伸びる想定です。売上が伸びるのに利益が15%近く落ちるというのは、原材料単価の上昇を売価に転嫁しきれない前提で置かれている、ということになります。
有価証券報告書のリスク一覧でも、前回から重要性が「増加」した唯一の項目が「原材料の調達及びその市況の動向について」で、「中東情勢の悪化により安定調達とコスト増加のリスクが高まっております」と書かれています。会社は使用量の多い原材料についてナフサ連動型の契約を採用しており、ナフサ価格が上がれば時間差で仕入単価に効いてくる構造です。
財務はこのシリーズで最も強い

ここからは良いほうの話です。財務の安定性はこのシリーズで扱った6社のなかでも突出しています。
- 自己資本比率80.7%(2026年3月20日現在)。記録のある18期すべてで75%を超えています。
- 有利子負債358百万円(決算短信の定義=利子を支払っているすべての負債。前期から87百万円減)。総資産の0.6%未満で、実質無借金です。
- 手元資金は現金及び預金20,761百万円に有価証券1,498百万円と長期預金4,000百万円を足して26,259百万円(2026年6月20日現在)。自己株式を除いた時価総額約601億円に対して44%に相当します。

営業キャッシュフローは記録のある18期すべて黒字で、直近2期は70億円台です。フリーキャッシュフローの赤字は2009年3月期と2017年3月期の2回だけで、いずれも設備投資が営業CFを上回った年でした。
ひとつ注意したいのが設備投資と減価償却の伸びです。設備投資額は2023年3月期の16.2億円から2026年3月期の36.2億円へ増え、減価償却費も2,605百万円(前期比+13.9%)まで膨らみました。今期は減価償却費2,849百万円(+9.3%)を見込んでおり、これも今期の減益要因のひとつです。第1四半期の短信でも「運賃、減価償却費等の増加」が明記されています。
EPSの伸びの半分は、株数の減少から来ている

この会社を語るうえで欠かせないのが自己株式です。発行済株式25,607,086株のうち9,433,331株、実に36.8%を会社が保有しています(2026年6月20日現在。うち自己名義8,397,300株、株式付与ESOP信託991,500株、役員報酬BIP信託56,500株)。
株式分割は一度もしていないので、発行済株式数は昔から25,607,086株のまま。減ってきたのは自己株式を除いた実質の株数です。純利益をEPSで割って逆算すると、2011年3月期の25.68百万株から2026年3月期の16.15百万株へ、15年で37%減っています。
大きく効いたのが2020年3月期の128億円の自社株買いで、この1回で23.14百万株が17.89百万株になりました。2024年3月期にも46.6億円を買っています。総還元性向は2020年3月期が477.7%、2024年3月期が140.3%でした。
この効果は数字ではっきり出ます。純利益は2016年3月期の24.1億円から2026年3月期の47.0億円へ10年で1.95倍。一方EPSは103.72円から290.73円へ2.80倍です。採点のEPS 10年CAGRは10.86%で最高評価の◎ですが、純利益ベースの伸びは年6.9%ほど。差分の年4%弱は株数の減少によるものです。
これは悪いことではありません。株主にとっては配当と同じく現金の還元です。ただEPSと配当の伸びを見るときは、そのうちどれだけが利益の伸びで、どれだけが株数の減少なのかを分けて見ておく必要があります。採点で「⑥現金等」が◎でなく○なのも、現金等が2017年3月期の199億円から2026年3月期の197億円と10年でほぼ横ばい(0.94倍)だからで、これは稼いだ資金を自社株買いと配当に回してきた結果です。
中期経営計画2027をどう読むか
7月23日には「中期経営計画2027」も同時に公表されました。2027年3月期から2029年3月期までの3か年です。
| 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(計画) | 2028年3月期(計画) | 2029年3月期(計画) | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45,673百万円 | 48,530百万円 | 51,483百万円 | 52,679百万円 |
| 営業利益 | 6,723百万円 | 6,232百万円 | 7,416百万円 | 7,770百万円 |
| 営業利益率 | 14.7% | 12.8% | 14.4% | 14.8% |
| 年間配当 | 145円 | 135円 | 155円 | 165円 |
読み方のポイントは初年度が谷になっていることです。計画の1年目である今期に営業利益6,232百万円まで下がり、2年目・3年目で戻す形。最終年の7,770百万円でも、2024年3月期の7,332百万円をわずかに超える程度です。3か年かけて、ピークだった水準に戻すという計画になります。
配当も同じで、今期135円→155円→165円。前期の145円を超えるのは2028年3月期という見取り図です。会社は「事業環境の変化に迅速に対応するため、1年ごとに計画を見直しローリングしていく」としています。
資本コストへの言及もあります。株主資本コストは7%程度(CAPMで算出)と認識し、ROE目標を前中計の「8%以上」から「8%〜10%以上」へ、営業利益率目標を「12%以上」から「12%〜14%以上」へ引き上げました。還元方針のDOE基準も2.5%→3%です。前中計のROE実績は2024年3月期10.3%、2025年3月期9.4%、2026年3月期8.7%と3期連続で低下しており、目標の引き上げはその流れを止める意思表示と読めます。
採点で減点2がついた理由
本シリーズの採点では、加点21点・減点-2点で総合19点、146社中6位でした。判定年数は18年です。
| 項目 | 評価 | 根拠 |
|---|---|---|
| ①売上高 | ○ | 10年CAGR 3.06% / 直近4期 4.89% |
| ②EPS | ◎ | 10年CAGR 10.86% / 直近4期 22.18% |
| ③営業利益率 | ◎ | 14.72% |
| ④自己資本比率 | ◎ | 80.7% |
| ⑤営業CF | ◎ | 赤字0回・18期連続黒字 |
| ⑥現金等 | ○ | 10年で0.94倍/現金比率31.6% |
| ⑦配当金 | × | 連続増配0期 |
| ⑧配当性向 | ◎ | 49.9%(30〜50%が満点) |
| ⑨株価の推移 | ○ | 5年+125% / 1年-0.7% / トレンド横ばい |
自己資本比率80.7%・営業CF18期連続黒字・営業利益率14.7%と、財務と収益性の項目はほぼ満点に近い。落としたのは配当の連続性(連続増配0年)と現金(10年で0.94倍)、株価(直近1年-0.7%)の3つ。減点-2点の中身は次の2つです。
- 減配1回(2026年3月期):年間150円→145円。配当性向50%を目安にしている以上、利益が減れば配当も減ります。連続増配年数は0年で、⑦配当金の評価は×です。
- タコ足配当1回(2010年3月期):配当性向147.19%。利益を超える配当を出した年が1回あります。
なお配当履歴をさらにさかのぼると、2015年3月期に中間配当を16円→26円に引き上げて年間42円としたあと、2016年3月期は32円に戻しています。採点の減点には含まれていませんが、年間配当が前年を下回った年はこれ以外にもある、ということになります。
「⑨株価の推移」が○なのは、5年騰落率が+125%と大きい一方で、直近1年が-0.7%、12か月移動平均の傾きが-4.3%とマイナスに転じているためです。トレンド判定は「横ばい」でした。
株価

株価は5年で+125%です。伸びたのは2023年から2024年前半で、2024年2月の5,190円が高値。営業利益が+81%になった2024年3月期の好決算と、配当を50円から150円へ3倍にした発表が重なった時期です。
そこからは戻り切っていません。2026年8月31日終値3,715円は高値から約28%低い水準で、直近1年の騰落率は-0.7%です。決算短信に載っている「時価ベースの自己資本比率」も、2024年3月期の113.1%から2026年3月期の74.8%へ下がっています。
本シリーズのランキングを作った2026年8月21日時点の株価は3,700円、予想利回り3.65%でした。
株主構成も見ておきます。
| 株主 | 持株比率 |
|---|---|
| 未来A.K.O株式会社 | 13.84% |
| 名古屋中小企業投資育成株式会社 | 8.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口) | 5.76% |
| 未来社員持株会 | 4.81% |
| 山田雅裕 | 4.44% |
| 山田智絵 | 4.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.43% |
| 清水陽一郎 | 4.1% |
所有割合は発行済株式(自己株式を除く)の総数に対するもの(2026年3月20日現在)
従業員の持株会(4.81%)と株式付与ESOP信託(5.76%)が上位に入っているのがこの会社らしいところです。ちなみに提出会社の平均勤続年数は23年7か月、平均年間給与は6,577,764円で、労働組合は結成されていません。
この会社を見るうえでの前提
有価証券報告書に記載された主要なリスクです。
- 新設住宅着工状況の動向:発生頻度 中/影響度 大。電材及び管材事業と配線器具事業はともに住宅建築業界に大きく依存する。2025年4月施行の建築基準法改正により着工は減少傾向
- 原材料の調達及びその市況の動向:発生頻度 中/影響度 大。前回から重要性が『増加』。中東情勢の悪化により安定調達とコスト増加のリスクが高まっている
- 製造物責任:発生頻度 中/影響度 大
- 基幹システムに関するリスク:発生頻度 小/影響度 大
- 災害等に関するリスク:発生頻度 中/影響度 中
- 経営方針(物流費):発生頻度 小/影響度 中。特約代理店を置かず全国の問屋に直接販売するため受注が小口化し、物流費の負担が増える
確認しておきたいこと
- 10月の中間決算。 会社が明記した「第1四半期の反動減」がどの程度だったかを最初に確認できる場所です。中間期の営業利益予想は3,343百万円(前年同期比+5.8%)で、逆算した第2四半期単独は-16.8%です。
- 通期予想の引き上げがあるか。 この会社は4期連続で期初の配当予想を引き上げてきました。配当性向50%を目安にしている以上、利益予想が上がれば配当も自動的に上がります。逆に下がれば配当も下がります。
- ナフサ価格と原材料単価。 減益予想の主因です。電材及び管材の営業利益5,107百万円(-14.8%)という前提が動くかどうかは、ここで決まります。
- 2028年3月期の配当155円が視野に入るか。 中期経営計画では2年目に営業利益7,416百万円まで戻し、配当155円を計画しています。前期の145円を上回るのはここからです。
まとめ
未来工業の財務は、このシリーズで扱った6社のなかで最も強いものです。自己資本比率80.7%、有利子負債358百万円、営業CFは18期すべて黒字。市場が縮むなかで価格改定によって5期連続の最高売上を出し、営業利益率も14.7%を保っています。
そのうえで、「配当は35円増額」という見出しの読み方には注意が要ります。増額の相手は4月に置いた期初予想100円であって、前期実績145円と比べれば10円少ない。今期は増収ながら営業利益-7.3%・純利益-7.5%の減益予想で、配当性向50%を目安にしている以上、配当は利益に連れて下がります。
第1四半期が過去最高だったことも、そのまま先行きの強さにはつながりません。会社自身が「自己防衛みあい需要」の反動減を予想に織り込んでいるからで、逆算すると第2四半期単独は-16.8%、下期は-18.9%です。
「高配当株」として見るなら、判断の軸は利益がいつ戻るかに置くのが妥当です。この会社の配当は方針上、利益のほぼ半分で決まります。会社の中期経営計画では2028年3月期に営業利益7,416百万円・配当155円まで戻す絵が描かれています。その1年目にあたる今期をどこまで守れるかが、次の1年の見どころになります。
動画版
この記事の内容を、グラフを見ながら約20分で解説した動画版です。減益なのに増配になる仕組み(5分06秒〜)、4月に業績予想を「未定」にしていた経緯(5分54秒〜)、そして「35円増配」を前期実績と比べ直すところ(6分44秒〜)が今回の中心です。第1四半期の過去最高がそのまま第2四半期の逆風になる話は10分02秒からです。
データ出所
- 2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-07-23/TDnet)
- 連結業績予想と実績の差異及び連結業績予想修正並びに配当予想の修正(増配)に関するお知らせ(2026-07-23/TDnet)
- 「中期経営計画2027」の策定に関するお知らせ(2026-07-23/TDnet)
- 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026-04-23/会社IR)
- 剰余金の配当(増配)に関するお知らせ/「中期経営計画2027」の公表の延期について(2026-04-23/会社IR)
- 2026年3月期 決算説明資料(2026-05-15/会社IR)
- 2026年3月期 第3四半期決算短信(2026-01-29/会社IR)
- 第61期(2026年3月期)有価証券報告書(2026-06-16/会社IR)
- 業績・配当・財務・キャッシュフローの長期推移(2009〜2026年3月期/IR BANK)
- 株価・PER・PBR・時価総額(2026-08-31終値/株探)
本記事は公開情報を集計・整理したものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。未来工業の決算期は3月20日締めで、第1四半期は3月21日〜6月20日にあたります。株式分割は実施されていないため、1株あたりの数値はすべて開示時点の値をそのまま並べています。数値は各出所の公表時点のもので、その後の開示により変わることがあります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。


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